矯正治療で後戻りが起こるのはなぜ?
矯正治療には、保定期間(ほていきかん)というものがあるのをご存知でしょうか?矯正治療で動かした歯の後戻りを防止するための期間で、リテーナーと呼ばれる専用の装置を用います。保定にかかる期間は、歯を動かすのに要した期間と同等なので、一般的には2~3年、リテーナーを装着することとなります。そこで気になるのが“後戻りが起こる理由”ですよね。
矯正治療で歯が動くメカニズム
矯正後に後戻りが起こり理由を考える上で、歯が動く仕組みについてまず知る必要があります。というのも、歯の位置を移動させる行為は、極めて特殊なものなので、そのメカニズムについて詳しく知っている人はほとんどいらっしゃらないかと思います。
歯は硬い骨に埋まっている
私たちの歯は、歯槽骨(しそうこつ)と呼ばれる硬い骨にしっかりと埋まっています。歯を自力で移動させることができないのはそのためです。そんな歯を任意の位置まで移動させるには、精密にコントロールされた矯正力をかける必要があります。具体的には、マルチブラケットやマウスピース型矯正装置を使って、歯を少しずつ移動させていくのです。
骨の吸収と添加の繰り返し
歯槽骨に埋まっている歯を移動させるには、前方にある骨の吸収が起こらなければなりません。歯が前方へ移動した後は、後方にできるすき間に骨の再生、あるいは添加が起こる必要があります。この骨の吸収と添加を合わせて“骨のリモデリング”と呼び、それ相応の期間を要するのです。骨の添加が完了していなければ、当然、歯は元の位置へと戻ります。
歯周組織のリモデリングも必要?
歯は、歯槽骨と直接結合しているわけではなく、歯周靭帯(ししゅうじんたい)などが介在しています。歯を移動した直後は、歯周靭帯が元の位置へと戻そうとします。歯周靭帯は、歯がもともとあった位置に最適化されているからです。そうした軟組織のリモデリングも正常に完了しなければ、後戻りする力が働き続けます。そう考えると、歯の位置を固定する保定期間の必要性も理解しやすいことでしょう。
保定処置の痛みについて
歯を動かす動的治療(どうてきちりょう)には、少なからず痛みを伴います。矯正は、歯槽骨に埋まっている歯を人為的に移動する行為なので、ある程度の痛みや不快感は避けられません。一方、保定処置では、それほど強い痛みや不快感を伴うことはありません。もうすでに移動が完了した歯を固定する処置であり、装置自体もシンプルなものだからです。もちろん、痛みの感じ方には個人差があるため一概にはいえませんが、動的治療ほど辛い思いをすることはまずありませんのでご安心ください。
保定処置を行わないとどうなる?
矯正治療が終わった後になにもせず放置すると、上述したような歯の後戻りが起こります。どれくらい戻るかはケースによって異なりますが、きれいに仕上げた歯並びやかみ合わせが乱れることは間違いありません。数年かけた治療が無駄になってしまうのはあまりにも残念ですよね。それだけに、動的治療後の保定処置は必ず受けるようにしましょう。
まとめ
このように、矯正治療後は歯の後戻りのリスクがあります。それはすべてのケースに当てはまることですので、保定処置を受ける必要があります。矯正によって得られた美しい歯並びを維持するためにも、保定処置までやり遂げることが大切です。